✍ 古家あきら | 2026-08-03 更新
会社の離職率を調べる4つの方法 — 公開データ・クチコミ・求人頻度から推定
「この会社の離職率、どのくらいだろう?」——応募判断や取引判断で気になる数字ですが、日本の会社の大半は離職率を公表していません。
先に結論から。離職率が公表されているのは①上場企業の一部(CSRレポート)と②新卒3年以内の離職率(厚労省の全社統計だけ・個社は分からない)だけ。個社の推定は、③在籍者クチコミ ④求人の再掲載頻度、の間接指標で行うしかありません。
しょくばログという会社データベースを運営していると、この「離職率どこで見れる?」の問い合わせは月に何度もきます。今日は正直に「見れない」ことを前提に、推定手段を4つ整理します。
前提:離職率の公式データがある会社は少ない
「離職率」は法律で公表義務のある数字ではありません。だから会社が自発的に開示しない限り、外部からは分かりません。日本で個社の離職率を公表している会社は5%以下(うちの体感)。
公表している会社(レア)
- 東証プライム上場企業の一部:CSRレポート・統合報告書・有価証券報告書に「離職率」「平均勤続年数」を書いていることがある。ただし義務ではないので、書かない会社も多い
- 健康経営優良法人・くるみん認定企業:申請時に離職率データを提出しているので、認定企業リストから逆算できる場合がある
- 上場前後のスタートアップ:目論見書に「従業員数の推移」があり、そこから増減を推定
公表されていない会社(大多数)
- 非上場の大手・中堅・中小:公表義務なし
- 人材業界・介護・小売など離職率の高い業種:あえて開示しないのが普通
調べ方①:上場企業なら「有価証券報告書」「統合報告書」
上場企業の場合、EDINET(金融庁の書類公開システム)で有価証券報告書を確認。「従業員の状況」欄に平均勤続年数・平均年齢が書かれています。
- 平均勤続年数が長い(15年以上) → 離職率低い
- 平均勤続年数が短い(3〜5年) → 離職率高い or 急成長で新入社員が多い
さらに統合報告書・CSRレポート・サステナビリティレポートに、離職率そのものを書いている会社もあります。会社名 + 「CSRレポート」or「統合報告書」で検索。
調べ方②:新卒3年以内離職率(業界別・厚労省統計)
厚労省が毎年公表している「新規学卒者の離職状況」では、業界別の3年以内離職率が分かります。ただし個社ではなく業界平均です。
- 宿泊・飲食サービス業:3年以内離職率 約50%(高い業界代表)
- 教育・学習支援業:約46%
- 医療・福祉:約39%
- 建設業:約36%
- 製造業:約19%(低い業界代表)
- 金融・保険業:約24%
自分が応募している業界の平均を知っておくと、面接での「うちは離職率低いです」の相対的な意味がつかめる。全業界平均は32%くらい、と覚えておくと便利。
調べ方③:在籍者クチコミサイト(実運用が見える)
openwork・転職会議・エンライトハウスなどの在籍者クチコミサイトで、以下を確認:
- クチコミの投稿数:多い=実際に離職者が多い可能性(在籍中は書きにくく、退職後に書く人が多い)
- 「退職理由」欄の投稿:具体的な退職理由が複数書かれていれば、それが実態
- 「同期は何人残っていますか」の投稿:具体的な残存数が書かれていることがある
- 投稿の時系列:直近1年に集中しているなら、最近の離職ラッシュのサイン
クチコミサイトはネガティブに偏る(円満退職者はわざわざ書かない)ので、絶対値ではなく傾向として読む。会社評判の調べ方全般は会社の評判・口コミの調べ方、ブラック企業の見分け方はブラック企業の見分け方を参照。
調べ方④:求人の再掲載頻度(うち独自の推定手法)
同じ会社が同じ職種を頻繁に求人している場合、離職率が高い間接指標として使えます。
- 常時掲載:拡大中 or 恒常的に人手不足(=離職が多い可能性)
- 半年おきに繰り返し掲載:定期的な退職があるサイン
- 職種が特定に偏っている(例:営業だけ何度も出す):その職種の離職率が高い
しょくばログはIndeedの求人データを収集しているので、同じ会社の求人掲載頻度が見えます。求人頻度から離職率を推定するのはうちの独自視点で、他のサービスではあまりやっていない分析です。
ただしこれは推定であって、拡大期のスタートアップは離職ではなく採用増で頻繁募集することもあるので、業績と組み合わせて判断。
しょくばログを運営して分かった、いちばん正直な話
うちは全国 4,988,967社 を扱っていて、Indeed経由で求人データも継続収集しています。「同じ職種を何度も出している会社」は、DBで機械的に抽出可能——たとえば「営業を過去1年で6回以上募集している中小」を絞り込むと、離職の激しさが数字で見えます。
一方、離職率そのものを持っているデータソースは日本にほぼ無いのが現実です。うちも持っていません。上場企業なら統合報告書、非上場なら間接推定、これ以外の道はありません。
もう一つ気づいたこと:業界別の離職率は結構当てになる——「宿泊・飲食は3年で半分辞める」というのは業界の構造そのもので、個社差より業界差のほうが大きい。だから業界を選ぶ段階で離職リスクは大部分決まる、と割り切って考えるのが実務的。
よくある質問
「離職率が低い会社」を探す最短ルートは?
①平均勤続年数15年以上の上場企業 ②健康経営優良法人 ③くるみん認定企業、この3つのリストで絞り込むのが最短。上場企業なら有価証券報告書で数字が確認できるので、面接前に見ておく。
新卒と中途で離職率は違うのですか?
はい、大きく違います。新卒3年以内離職率は約32%(厚労省統計)、中途採用の1年以内離職率は業界により30〜50%と、中途のほうが高い傾向。中途採用ではミスマッチが原因になりやすい。
クチコミの数が少ない会社は離職率が低いということ?
断定できません。①本当に離職者が少ない ②従業員が少なくてそもそも投稿母数が少ない ③クチコミを書かない文化 のどれも可能性があります。他の指標と組み合わせて判断。
「離職率10%以下」を謳っている会社は信頼できますか?
信頼できる場合と、そうでない場合がある。信頼できるのは①上場企業でCSRレポートに数字の算出方法が書いてある ②健康経営優良法人など第三者認定がある、の場合。「自称10%」は算出方法が不明なことが多く、鵜呑みにしないほうが安全。
業界平均より離職率が明らかに高い会社は避けるべき?
業界にもよる。飲食業界で3年離職率30%なら、業界平均50%より圧倒的に低い=優良企業。一方で、金融業界で3年離職率50%なら、業界平均24%の2倍で明らかに問題あり。必ず業界平均と比較する、絶対値では判断しない。
求人が長期間出ている会社は必ず離職率高い?
いえ、他の可能性もあります:①事業拡大で常時採用 ②助成金目的の形だけ求人 ③特殊スキルで採用に時間がかかる、など。求人頻度は一つのシグナルであって、決定的な証拠ではありません。
まとめ
会社の離職率は、個社データは大多数が非公開。だから①上場企業なら有価証券報告書・統合報告書、②非上場は業界平均で相場を掴む、③クチコミで実運用、④求人頻度で間接推定、の4つを組み合わせて推定するしかありません。
業界平均を先に押さえておくのが最も費用対効果が高い(宿泊・飲食は元から高い、金融・製造は低い)。個社差より業界差のほうが大きいので、業界を選ぶ段階で離職リスクは大部分決まる、と割り切って考えるのが実務的。
うちのDBでも求人再掲載頻度からの推定はできますが、これは推定であって公的な数字ではないことは押さえておいてください。応募判断は複数の指標を組み合わせて総合判断で。
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