✍ 古家あきら | 2026-08-28 更新

応募先が社会保険に入っているか確認する方法 — 厚生年金の適用事業所検索を法人番号で引く

国の台帳と会社を法人番号で照合するイメージ

先に結論です。応募先が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入しているかは、日本年金機構の厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システムで、その会社の法人番号を入れれば無料・登録なしで確認できます。所要時間は1分もかかりません。

そして、この記事でいちばん伝えたいのは検索の存在ではなく、都道府県のプルダウンを選ばずに、空のまま検索することです。ここを選んでしまうと、加入している会社なのに「該当する事業所がありません」と返ってきます。実際に引っかかった例を後で丸ごとお見せします。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「求人に社会保険完備と書いてあるが本当か」という趣旨の確認をしたい、という声をいただきます。求人票の文言は会社の自己申告ですが、厚生年金の適用事業所かどうかは国が持っている情報で、しかも一般公開されています。確かめない手はありません。

最短ルートは「法人番号で引く」

検索システムには漢字・カナ・法人番号の3つの検索方法がありますが、法人番号で引くのが圧倒的に確実です。社名の表記ゆれ(株式会社の位置、全角半角、旧字)で悩まなくて済みます。

手順はこうです。

これだけです。私が試した時点(2026年8月28日)で、システムのデータ更新日は2026年08月04日と表示されていました。月次で更新されている前提で見るのがよさそうです。

結果画面に出る8項目 — 実際に引いてみる

トヨタ自動車株式会社(法人番号 1180301018771)を引くと、次の内容が返ってきました。

無料で、登録もなく、ここまで出ます。注目してほしいのは後ろの3つです。

適用年月日は、その事業所がいつから厚生年金の適用を受けているかです。会社の設立年と大きくズレていたら、その間は加入していなかったか、事業所として別に立ち上がったかのどちらかです。設立年の調べ方は会社の設立年の調べ方にあります。

被保険者数は、その事業所で厚生年金に加入している人の数です。これは求人票の「従業員数」とは出どころが違う数字で、会社の自己申告ではありません。会社の従業員数を調べる方法で書いたとおり、従業員数は定義があいまいなまま使われがちですが、被保険者数は「厚生年金に入っている人が何人か」という一つの定義で数えられた実数です。求人票の数字と桁が違っていたら、何をもって従業員と呼んでいるのかを面接で聞く材料になります。

現存/全喪は後ろの章で詳しく書きます。

都道府県プルダウンの罠 — 実例

ここからが、この記事のいちばんの中身です。

株式会社ニトリ(法人番号 3430001044958)を、北海道を選んで検索したところ、結果はこうでした。

> 該当する事業所がありません。検索条件を変更し、再検索をしてください。

ニトリが厚生年金に入っていないはずがありません。理由は単純で、登記上の本店所在地と、社会保険の適用事業所の所在地が違うからです。

しょくばログのデータベース(国税庁の法人番号公表データが元)では、株式会社ニトリの本店は北海道 札幌市北区です。ところが同じ法人番号を、都道府県を空にして引き直すと、こう返ってきました。

東京都の北区です。札幌市北区と東京都北区、どちらも「北区」ですが別の場所で、年金事務所も東京の北年金事務所。都道府県で北海道を指定した瞬間に、この会社は検索結果から消えます。

これは特殊な例ではありません。厚生年金は事業所単位で適用される制度なので、登記の本店と社会保険の届出先が一致する保証はそもそもありません。本店を登記だけ地方に置いて実務は東京、という会社はいくらでもあります。会社の所在地の調べ方で本店・支店・営業所の違いを書きましたが、社会保険はさらに別の軸で場所を持っている、と考えるのが正確です。

だから、法人番号で引くときは都道府県を選ばない。これだけで誤判定のほとんどが消えます。

「出てこない=未加入」ではない

検索して出てこなかったとき、すぐに「この会社は社会保険に入っていない」と結論づけるのは危険です。理由が5つあります。

順番としては、都道府県を空にする → 法人番号を確かめ直す → それでも出なければ会社に直接聞く、が現実的です。面接の場で「社会保険の加入はいつからですか」と聞くのは、失礼でも何でもない普通の質問です。応募前に確かめておくことのリストは面接前にやる会社研究チェックリストにまとめてあります。

そもそも、入る義務があるのはどんな会社か

日本年金機構の適用事業所と被保険者のページに、はっきり書かれています。

つまり、法人であれば「人数が少ないから入らなくていい」は成り立ちません。「うちは小さいので社会保険はやっていない」と説明された場合、その会社が法人なら、説明として通っていないことになります。

被保険者になるのは、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人で、国籍・性別・年金の受給の有無は問いません。同じページに、試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められると明記されています。「試用期間中は社会保険に入れない」という説明は、この記述と合いません。

なお、届出をしなかったり虚偽の届出をした事業主には、厚生年金保険法第102条で6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています(e-Gov法令検索)。ただし実務としては、まず日本年金機構による加入指導が行われる流れになっており、機構自身も「加入指導等の取り組みを行っています」と説明しています。

法人442万社に対して、適用事業所は288万か所

ここで、うちのデータベースと国の統計を並べてみます。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和7年12月公表)によると、令和6年度末現在の適用事業所数は288.1万か所、前年度末に比べて9.0万か所(3.2%)の増加です。被保険者数は4,285万人。

一方、しょくばログのデータベースで数えると、活動中の法人は4,988,967社、そのうち会社(株式会社・有限会社・合名・合資・合同)に限っても4,422,900社あります(2026年8月28日時点の集計)。

法人はすべて強制適用のはずなのに、会社だけで442万社、適用事業所は288万か所。150万件以上の開きがあります。

この差をそのまま「150万社が未加入」と読むのは誤りです。少なくとも次の要因が混ざっています。

それでも、桁として法人数のほうが大きく上回っているという事実は残ります。ここから言えるのは「未加入がこれだけある」ではなく、登記されている会社の数と、実際に人を雇って社会保険を運営している事業所の数は、まったく別の規模感であるということです。会社が実在するかどうかそのものを確かめる手順は会社が実在するか・倒産していないかを確認する方法にあります。

パート・アルバイトで応募するときは条件が別

「会社は適用事業所だった。では自分は加入できるのか」は、また別の話です。ここは制度が動いている最中なので、2026年8月時点の状況を整理しておきます。

まず基本は4分の3基準です。1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上なら被保険者になります。

4分の3未満でも、特定適用事業所などで働く場合は次の3つをすべて満たせば加入対象です。

特定適用事業所とは、1年のうち6か月以上、厚生年金保険の被保険者総数が51人以上となることが見込まれる企業等のことです。ここで重要なのは判定の単位で、法人事業所の場合は「法人番号が同一であるすべての適用事業所の被保険者数の合計」で見ます。支店単位ではなく法人単位です。検索結果の「適用拡大の事業所」欄に該当と出ていれば、その会社は該当しています。

そしてこの先、線が2回動きます。

直近では、令和6年10月に規模要件が51人以上へ拡大されたことで、短時間労働者を使用する事業所数は令和6年度末で14.9万か所(前年度末比58.8%増)、短時間労働者数は111万人(同21.1%増)まで増えました。この2年で最も動いている領域なので、パート・アルバイトの求人を見るときは求人票の記載より制度の現在地を確認したほうが確実です。給与欄の読み方は求人票の給与欄の見方に整理しています。

「全喪事業所」という区分が持つ意味

検索対象の選択肢に「全喪事業所」があります。これは適用事業所でなくなった事業所のことです。廃業、事業所の廃止、被保険者が全員いなくなった、といった理由で適用を外れた記録が残ります。

かつては「全喪事業所一覧表」が公表されていましたが、日本年金機構のページによればその掲載は平成28年10月30日をもって終了し、現在は検索システムで調べる形に一本化されています。

取引先や応募先を調べていて「全喪」で出てきたら、その事業所は現時点で社会保険の適用を受けていないということです。倒産や廃業のサインである可能性もあれば、単に事業所を統廃合しただけのこともあります。それだけで判断せず、会社の求人が突然消える理由や登記の状態と合わせて見るのが安全です。

よくある質問

求人票に「社会保険完備」と書いてあれば、確認しなくていいですか?

「社会保険完備」は法律上の定義がある用語ではなく、会社が書いている文言です。多くの場合は健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の4つを指しますが、書き手によって範囲が変わります。適用事業所検索で厚生年金の適用を実際に確認しておけば、少なくとも厚生年金と健康保険については裏が取れます。求人票の言葉をどこまで信じるかの一般論はブラック企業の見分け方にも書きました。

検索結果の「被保険者数」は、その会社の従業員数と考えていいですか?

いいえ、別物です。被保険者数はその事業所で厚生年金に加入している人の数なので、加入要件を満たさない短時間の従業員や、70歳以上で被保険者から外れた人は含まれません。逆に、複数の事業所を持つ会社なら事業所ごとに分かれて表示されるため、1件の数字が会社全体を表すとは限りません。会社全体の規模を見たいときは会社の従業員数を調べる方法の手順と合わせてください。

社長ひとりの会社でも社会保険に入る必要がありますか?

はい。日本年金機構は強制適用事業所を「株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)」と説明しており、従業員がいない法人も対象です。役員報酬が支払われていれば、その役員自身が被保険者になります。

会社が社会保険に入っていないようです。どうすればいいですか?

まず都道府県を空にして検索し直し、法人番号が正しいかを確かめてください。それでも該当がなく、相手が法人であるなら、事業所を管轄する年金事務所に相談するのが筋です。日本年金機構は将来的な無年金者・低年金者の発生を防ぐ目的で加入指導等の取り組みを行っており、相談窓口はそのためにあります。

試用期間中は社会保険に入れないと言われました。

日本年金機構のページには、使用関係について「試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められることとなります」と明記されています。試用期間であることだけを理由に加入させない扱いは、この説明と整合しません。入社日や条件は書面で確認しておくことをおすすめします。

個人事業主に発注しています。その相手も検索できますか?

できません。この検索システムは法人番号か事業所名称で引く仕組みで、個人事業所は法人番号を持ちません。名称で引ける可能性はありますが、屋号と届出名が一致するとは限らないため確実ではありません。取引相手が法人か個人事業主かの見分け方は個人事業主と法人の見分け方にまとめています。

この記事の数字について

適用事業所の検索方法・結果項目・データ更新日(2026年08月04日)、およびトヨタ自動車株式会社・株式会社ニトリの検索結果は、日本年金機構 厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システムを2026年8月28日に実際に操作して取得したものです。強制適用・任意適用・被保険者の要件は日本年金機構「適用事業所と被保険者」(更新日2026年6月26日)、短時間労働者の適用拡大と企業規模要件の改正予定は日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(更新日2026年4月17日)、全喪事業所一覧表の掲載終了は日本年金機構「全喪事業所一覧表」によります。適用事業所数288.1万か所・被保険者数4,285万人・短時間労働者を使用する事業所数14.9万か所・短時間労働者数111万人は、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和7年12月)の令和6年度末現在の数値です。罰則は厚生年金保険法第102条によります。活動中の法人4,988,967社および会社4,422,900社は、しょくばログのデータベース(国税庁法人番号公表データを元にした2026年8月28日時点の集計)です。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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