✍ 古家あきら | 2026-08-26 更新

倒産1,037件は「17年ぶり」水準 — でも会社が消える出口は倒産だけではない

先に結論から。2026年7月の企業倒産は1,037件。ただし「会社が公的な記録から消える」件数は、倒産件数の4〜6倍あります。 倒産統計は会社の終わり方のうち、裁判所の手続きに乗った分だけを映した数字です。取引先や応募先の危うさを見るとき、倒産のニュースだけを追っていると、いちばん多い終わり方を見落とします。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、この「統計に出てくる倒産」と「うちのデータ上で静かに閉じていく法人」のギャップが、毎月はっきり見えます。今日はその両方を並べて書きます。

まず事実:2026年7月の倒産統計

帝国データバンクが2026年8月10日に公表した「倒産集計 2026年7月報」の数字です。

帝国データバンクは、2カ月連続で1,000件を上回るのは「リーマン・ショックの影響が残る2009年(11-12月)以来およそ17年ぶり」だとしています。

出典:帝国データバンク「倒産集計 2026年7月報」(2026年8月10日)同社プレスリリース(2026年8月12日)

中身を分解すると「やり直せた会社」は34件しかない

1,037件という総数より、私が毎月見ているのは内訳のほうです。7月の内訳はこうなっていました。

つまり7月に倒産した会社の96.7%は、再建ではなく清算です。再生型は前年より2割減っています。「倒産=会社がなくなる」というイメージは、実際の統計とほぼ一致してしまっています。

さらに帝国データバンクは、清算型の1,003件について、東日本大震災が発生した2011年3月(1,004件)以来、約15年ぶりに1,000件を超えたと指摘しています。件数だけでなく、終わり方の質も厳しくなっているということです。

なお、倒産の件数は集計する会社によって数字が変わります。同じ月・同じ言葉でも母数の取り方が違うためで、そのからくりは人手不足倒産は63件?30件? — 数字が2倍違う理由で詳しく書きました。

潰れる理由が入れ替わっている

もう一つ、7月の数字ではっきり出たのが「主因の交代」です。

この1年、倒産の話題といえば人手不足でした。実際うちでも「人が辞めて潰れる会社」の見分け方を書いています。ところが7月に限れば、人手不足倒産は前年から4割近く減り、代わりに物価高倒産が過去最多を更新しました。

見分け方の観点でいうと、この違いは小さくありません。人手不足倒産は求人の出し方や離職の様子という「外から見えるサイン」が出やすい。一方、物価高倒産は「仕入値の上昇を売価に転嫁できていない」という、外からはほぼ見えないところで進みます。決算書が手に入らない中小企業なら、なおさらです。金利上昇と借入依存の話は金利0.5%上昇で赤字企業率29.4%にまとめていますが、物価高も構造は同じで、効き方を決めるのは事業の良し悪しではなく、コスト構造と価格決定力です。その価格決定力を業種別の実数で見たものが価格転嫁率が再び4割割れの39.9%で、転嫁できているかどうかは会社の規模よりも業種の構造で決まっていました。

ここからが本題:うちのデータで見た「もう一つの出口」

ここからは、全国の法人データを持っている立場でしか書けない部分です。

しょくばログは国税庁の法人番号公表データをもとに、全国5,791,529件の法人を収録しています。このうち登記記録の閉鎖等が記録されている法人が762,832件、全体の約13%にのぼります。現存扱いで公開しているのは4,988,967社です。

そして「閉鎖」が記録された件数を月ごとに数えると、こうなります(2026年5月時点のデータ)。

倒産が月1,000件前後で推移しているのに対し、登記記録の閉鎖は通常月で4,000〜6,000件。桁がひとつ違うわけではありませんが、4〜6倍の開きがあります。

さらに、1月だけは異常な山が立ちます。

通常月の10倍以上です。これは業績の急変ではありません。法務省が毎年実施している休眠会社の整理作業と時期が一致します。株式会社なら最後の登記から12年、一般社団・財団法人なら5年、登記に動きがない法人が対象で、令和7年度は10月10日付で通知を発送し、12月11日付で登記官が職権で解散の登記を実施しています(出典:法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」)。これが翌年1月のデータに反映されている、と見るのが自然です。

年単位でも同じ傾向が出ます。うちのデータ上で閉鎖が記録された件数は、2022年 55,959件、2023年 61,709件、2024年 65,006件、2025年 119,114件。2025年が跳ねているのは、上記の一斉整理が乗った年だからです。

この数字をどう読むか(誤読しないための注意)

大事なので、うちのデータの限界も正直に書きます。

「登記記録の閉鎖」は倒産ではありません。 清算が無事に終わった会社、合併で消えた会社、行政の整理で解散扱いになった会社が全部混ざっています。黒字のまま畳んだ会社も、この中に入ります。したがって「閉鎖76万件=倒産76万件」ではまったくありません。

タイミングも実態とずれます。 会社が実際に事業をやめた日と、登記記録が閉鎖される日は別です。休眠会社の整理は「12年動きがない」が要件ですから、閉鎖の記録が立つのは事業停止から10年以上あとということも普通に起こります。閉鎖の記録が無いことは、その会社が今も動いている証明にはなりません。

それでも言えることは一つあります。会社の終わり方の主流は、ニュースになる倒産ではなく、記録の上で静かに閉じていくほうだということです。倒産統計だけを見ていると、この大きいほうを丸ごと見落とします。

実務では、この順番で確認する

応募先や取引先を見るとき、統計を読む前にやるべき確認があります。無料でできる範囲を、順番に。

1. 法人として実在し、登記が生きているか まず法人番号で引きます。ここで「登記記録の閉鎖」が付いていれば、その法人はすでに登記上は終わっています。手順は会社が実在するか確認する方法会社名から法人番号を調べる方法に書きました。

2. 今も活動している形跡があるか 登記が生きていても活動しているとは限りません。求人が出ているか、サイトが更新されているか、電話が通じるか。実体の薄い会社の見分け方は休眠・ペーパーカンパニーの見分け方にまとめています。

3. 支払い能力まで踏み込むか判断する ここから先は無料では限界があります。どこまで無料で粘り、どこから有料の信用調査に切り替えるかの線引きは取引先の信用を調べる方法で整理しています。

物価高倒産が主因になっている局面では、「今は売上が伸びている」は安心材料になりません。帝国データバンクも、売上高が増える過程でも資金繰りの悪化から倒産に至るケースがあるとして、与信管理の重要性を指摘しています。

よくある質問

倒産が増えているというニュースは、中小企業にとって危険信号ですか?

件数だけで慌てる必要はありませんが、7月の数字には無視できない特徴があります。負債5,000万円未満の倒産が655件(前年同月552件、18.7%増)と、小規模な会社の倒産が2割近く増えている点です。負債1,000億円級の大型倒産が総額を押し上げる一方で、件数の主戦場は小さな会社にあります。

「17年ぶりの水準」というのは、リーマン・ショック級ということですか?

いいえ。帝国データバンクの表現は「2カ月連続で1,000件を上回るのが2009年11-12月以来およそ17年ぶり」という、水準の比較です。当時と同じ経済環境という意味ではありませんし、リーマン・ショック当時の倒産件数のピークとは規模が異なります。見出しの言葉だけで受け取らないほうが安全です。

取引先が倒産したかどうかを無料で確認できますか?

法的な倒産手続きの開始そのものは、官報で公告されます。加えて国税庁の法人番号公表データでは、清算が終わった法人に「登記記録の閉鎖等」が記録されます。ただし前述のとおり、この記録が立つのは手続きが完全に終わったあとで、破産手続きの開始時点では反映されません。速報性は期待できないと考えてください。

会社が消えた場合、その会社の情報はどこにも残らないのですか?

法人番号のデータには残ります。しょくばログでも、登記記録が閉鎖された762,832件は削除せずに保持しています。過去にその法人が存在したこと、商号、所在地、閉鎖の時期は後から確認できます。事業実態の記録(求人やクチコミ)は別ですが、法人としての履歴は消えません。

物価高で苦しい会社かどうかを、外から見分ける方法はありますか?

決算書がない前提だと、直接見る方法はありません。間接的な手がかりは、値上げのアナウンスを出しているか、原価の重い事業構成か、求人票の給与提示が同業と比べて動いていないか、といったところです。断定はできません。見分けられないものは見分けられないと認めたうえで、実在・活動・支払い能力の3段階で確認できるところまでを固めるのが現実的です。

まとめ

2026年7月の企業倒産は1,037件、2カ月連続の1000件超えで約17年ぶりの水準でした。中身を見ると、再生型はわずか34件で96.7%が清算型。主因は人手不足から物価高へ入れ替わり、物価高倒産121件は過去最多を更新しています。

一方で、うちのデータでは登記記録の閉鎖が通常月で4,000〜6,000件、1月には5万件級の山が立ちます。会社の終わり方の主流は、報じられる倒産ではありません。 統計は世の中の一部を切り取った窓であって、全体像ではないということです。

だからこそ、気になる相手がいるなら統計を読む前に個社を見に行くのが早い。しょくばログは全国の会社を1社1ページにまとめ、登記情報・所在地・求人を無料で確認できます。まずは会社名で検索してみてください。

※本記事は2026年8月26日時点で公表されている情報にもとづく整理です。倒産件数・負債額・要因別件数は帝国データバンクの公表値、休眠会社の整理作業に関する記述は法務省の公表資料、法人件数および登記記録の閉鎖の集計は国税庁の法人番号公表データにもとづく当サイトの集計(2026年5月時点)です。特定の企業の経営状態を評価・断定するものではありません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ