✍ 古家あきら | 2026-08-03 更新
会社の業界順位を調べる方法 — 大手・中堅・地域一番の見分け方
「この会社って、業界の中で大手なの? 中堅?」——応募先や取引先を調べているときに、意外と答えが出ないのがこの質問です。売上ランキングが公開されている上場企業なら簡単ですが、非上場の中堅・地域中小になると、途端に情報が消えます。
先に結論から。業界順位は、①上場なら売上・時価総額 ②非上場なら従業員数と地域シェア ③地方なら「その都道府県内での順位」で見るのが実務的です。 全国順位に固執すると多くの会社が「圏外」で終わってしまうので、粒度を切り替えるのがコツです。
しょくばログという会社データベースを運営していると、この「業界内でのポジション」の推定は毎日ぶつかる問題です。今日はうちのDBで実際に使っている見方をそのまま書きます。
まず前提:業界順位の"公式ソース"は限られる
日本の会社の「業界順位」を公式に決めているソースは、実はそんなに多くありません。
- 上場企業:東証の売上・時価総額・従業員数ランキング(有価証券報告書ベース)
- 業界団体の会員企業ランキング:業界団体があれば売上・出荷額を毎年発表している
- 民間調査:帝国データバンク、東京商工リサーチ(有料が中心)
- 経産省の統計:業種別の売上・従業員数分布(マクロ集計だけで個社は出ない)
つまり、非上場かつ業界団体に非加盟の会社は、「業界順位」という数字がそもそも存在しないことが多いのです。中小の9割以上はこの状態です。
じゃあどうやって順位感をつかむか
現実的な代替は、「順位が出ている指標で近似する」やり方です。よく使うのは3つ。
①従業員数で近似する
売上は非公開でも、従業員数は求人票や公式サイト、gBizINFOで拾えることが多いです。労働集約型の業種(建設・製造・小売・介護など)では、従業員数と売上はほぼ比例します。だから業種内の従業員数ランキングは、ざっくりした売上順位の代わりに使えます。
しょくばログでは業種ごとに従業員数上位社を出しています。たとえばIT・通信の会社一覧を開くと、業界の景色(全国137,759社、従業員データあり10,268社、平均203人)と、従業員数トップ5社が出るようになっています。
ちなみに現時点のIT・通信トップは、①ベルシステム24(28,667人)②ソフトバンク(24,332人)③チームラボ系……といった並びです。「思ってた順位と違う」ということもあるはずで、それはコールセンター系や派遣系が従業員数ランキングでは上位に来やすいから。従業員数=影響力ではないことは押さえておいてください。
②地域内シェアで見る
「全国順位で圏外」でも「都道府県内で3番手」なら、その地域では立派な有力企業です。地方の会社を評価するときは、この粒度が実務的です。
- 例:福井県の建設業3位=地元で最有力クラスの発注元
- 例:東京都のIT・通信3位=全国の巨大プレイヤー
数字の意味がまるで違います。しょくばログの都道府県×業種ハブでは、そのエリアで何社中の何番手か、が出るようにしてあります。
③会社ページの「業界内でのポジション」を読む
うちの会社ページ(/c?h=... から到達)を開くと、その会社の従業員数が業界平均の何倍か、業種内ランキング何位か、が出るようになっています。たとえば従業員24,332人の会社なら「IT・通信業界の全国平均203人を119.9倍上回る規模/全国第2位」といった具合。
業界平均との比較は、絶対数より直感的です。「全国5,000人の会社」と言われてもピンとこなくても、「業界平均の25倍」なら大手だと分かる。この見方をおすすめします。
「地域一番」の会社を見つけたいとき
Uターン転職やBtoBの新規開拓で「〇〇県で一番の××業」を探す場面はよくあります。実務的な調べ方は3つ。
- ① 業界団体の県支部の名簿:建設業なら県の建設業協会、製造業なら県の商工会議所など。加盟企業一覧の中で規模順が見える
- ② 都道府県×業種ハブで従業員数上位を見る:しょくばログや同種DBのハブページで、そのエリアの上位が並ぶ
- ③ 地元の商工会議所の会報誌:紙・PDFの年度報告に、地域の主要企業ランキングが載っていることが多い
ネットで一発では出ない場合が多いですが、上の順で当たれば9割は特定できます。
しょくばログを運営して分かった、いちばん正直な話
うちは全国 4,988,967社 を扱っていて、そのうち従業員データがある会社は 144,755社(約2.9%) です。残りの97%は従業員数不明——つまり業界順位を出したくても数字がありません。
なぜか。中小企業の従業員数は公的データに出ないからです。gBizINFOに載っているのは主に補助金申請歴や入札実績のある会社で、それがない中小はデータが空欄になります。求人票を出していれば拾えることもありますが、常時求人を出していない会社も多い。
だから「業界内で何位」という数字は、上位側の会社ほど正確・下位(中小)は推定すら難しいという非対称な世界です。うちのランキングに出てくる「トップ20社」は割と正確ですが、「うちの会社は業界で何位ですか?」と聞かれても、中小の場合は誠実に答えられないというのが実情。
そこで実務としては、まず地域を絞る(都道府県レベルまで下ろす)→ その中での従業員数順位を見る→ 業界団体の名簿と突き合わせる、この順で見るのがいちばん確実です。
よくある質問
売上ランキングと従業員数ランキングは同じですか?
業種によります。労働集約型(建設・製造・小売・介護・宿泊)ではほぼ比例、資本集約型(金融・不動産投資・IT SaaS)ではズレます。「1人あたり売上」が業種ごとに違うので、業種内で比較する分には有効ですが、業種をまたいで比較するときは注意してください。
上場企業と非上場企業を混ぜて順位を出せますか?
数字の質が違うので、混ぜないほうが安全です。上場は売上(監査済み)、非上場は従業員数(求人票などから)で、比較の土俵がそもそも違います。しょくばログのランキングも「従業員データがある企業内での順位」と明示しています。
帝国データバンク・東京商工リサーチと何が違いますか?
彼らは非上場企業の売上・利益まで有料で調査しています。うちは公開データと求人票の集計だけで運営しているので、売上までは踏み込めません。「有料でも正確な数字が要る場面」(買収・提携・大口取引)は彼ら一択。「無料でざっくり掴みたい」ならしょくばログや同種DBで足ります。
地方の会社の順位を知りたいときはどうすれば?
まず都道府県ハブから目的の県に入り、業種で絞る。そのエリアで従業員数の上位が並びます。同時に、県の建設業協会・商工会議所の会員名簿を見ておくと、加盟企業と非加盟企業の温度感まで分かります。
業界順位を上げたい場合はどうすれば?
これは会社経営側の質問ですが、順位を上げる王道は①M&Aで規模拡大 ②新規事業で母数拡大 ③業界の狭い方に定義を絞り込む、の3つ。特に③は情報発信で「〇〇特化」と打ち出せば、狭い定義の中で一番手を名乗れる可能性があります。
まとめ
会社の業界順位は、上場なら売上・時価総額、非上場なら従業員数と地域シェアで近似するのが実務的です。全国順位で圏外でも、都道府県内では有力ということはよくあるので、粒度を切り替えるのがコツ。
そして正直、日本の非上場中小の97%は従業員データすら公的には無い——うちが499万社を扱っていて実際にぶつかっている壁です。正確な順位が要る場面は帝国データバンクなど有料調査、ざっくり掴む場面は公開データの合わせ技、と割り切って使い分けてください。
会社の規模感全般は会社の規模を調べる方法、業種の考え方は会社の業種を調べる方法、実在確認は会社が実在するか確認する方法にまとめています。
※本記事は一般的な情報です。M&Aや大口取引などで確度の高い数字が必要な場合は、帝国データバンク・東京商工リサーチ等の有料調査をご利用ください。