✍ 古家あきら | 2026-08-23 更新

中華料理店の倒産が15年で最多 — 小さな飲食店の「危ないサイン」を会社データで確かめる

昨日(2026年8月22日)、東京商工リサーチが「2026年1-7月の中華料理店の倒産が22件」という集計を公表しました。前年同期比69.2%増、2012年以降では最多です。

先に結論を書きます。この22件は「大きな会社が傾いた」話ではありません。従業員5人未満が81.8%、負債1億円未満が81.8%、資本金1千万円未満が68.1% ——つまり、街角の小さな店が中心です。だからこそ、そこで働く人・材料を納めている人にとっては他人事になりにくい。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「業種まるごとの数字」と「目の前の1社」のあいだには、けっこうな距離があると感じます。この記事では、公表データの中身を見たうえで、自分の勤め先・応募先・取引先を無料でどこまで確かめられるかまで降ろします。

公表された数字(出典つき)

東京商工リサーチの集計は次のとおりです。

内訳も公開されています。

別の切り口の集計では、物価高が要因の倒産が5件(前年同期3件)、人件費高騰が要因の倒産が4件(前年同期1件)とされています。また2025年の中華料理店の休廃業・解散は99件(前年比47.7%増)で、直近10年では2023年の105件に次ぐ水準でした。

出典:東京商工リサーチ「2026年1-7月『中華料理店』倒産 22件に急増」(2026年8月22日)

参考までに、全国の企業倒産は2026年7月だけで1,028件(前年同月比6.9%増)、負債総額2,363億1,200万円(同41.4%増)です(東京商工リサーチ・2026年8月10日発表)。22件という数字は、全体から見ればごく小さい。「業種として異常事態」ではなく、「小規模店に負荷が偏っている」と読むほうが実態に近いと思います。

22件に共通する「形」

数字を並べ替えると、輪郭がはっきりしてきます。

破産が95.4% ——民事再生(事業を続けながら立て直す手続き)は1件だけでした。小規模な飲食店は、立て直す原資も担保も乏しく、いきなり終点に行きやすい。従業員から見ると、「調子が悪そう」と感じてから閉店までの時間が短いということです。

5千万円以上の資本金はゼロ ——チェーン本部のような規模の会社は今回の22件に入っていません。ここは安心材料であると同時に、注意点でもあります。規模が小さい会社ほど、外から見える情報も少ないからです。

原因の9割が販売不振 ——コストの話(物価高5件・人件費高騰4件)は単独の主因というより、売上が落ちたところに重なった追い打ちとして効いています。

しょくばログのデータで裏を取ってみた

ここからは、うちのデータベースで確認できることを書きます。全国の法人番号公表データ(国税庁)をもとにした約579万件の法人記録が手元にあります。

社名に「中華」「飯店」「餃子」「拉麺」のいずれかを含む法人を数えると、764件。このうち登記が閉鎖されている記録は118件(15.4%)でした。全法人の閉鎖率は13.2%(約579万件中、約76万件)なので、わずかに高い程度です。

現存する646件の所在地は、東京都188件・神奈川県66件・大阪府28件・愛知県27件・千葉県26件の順。首都圏に相当偏っています。

閉鎖登記のあった年を見ると、2026年(8月まで)11件、2025年15件、2023年12件。倒産統計ほど急な増え方には見えません。

ここは正直に限界を書いておきます。

1. 社名ベースの粗い抽出です。「◯◯軒」「◯◯楼」のように社名から業種が読めない店は拾えていません。 2. 法人だけです。個人事業として営む店には法人番号がなく、そもそもこのデータに存在しません。中華料理店は個人経営の比率が高い業態なので、実態の多くは法人データベースの外にあります。 3. 登記の閉鎖=倒産ではありません。解散・清算結了・合併も含みますし、倒産してから登記に反映されるまでには時間差があります。

つまり、法人データベースだけで「あの店は危ない」と判定するのは無理です。できるのは、その手前の事実確認だけ。ここを混同しないことが大事だと思っています。

働く人・取引する人が無料でできる確認

そのうえで、実際に手が動く順番を書きます。

① まず法人か個人事業かを確認する。 法人なら法人番号があり、商号・所在地・登記の閉鎖状況が国税庁のサイトで無料で分かります。個人事業ならこの情報自体が存在しないので、確認手段が変わります。判別のしかたは個人事業主と法人の見分け方にまとめました。

② 実在と閉鎖の確認をする。 ここは無料でほぼ確実に分かる領域です。手順は会社が実在するか・倒産していないかを確認する方法に書きました。逆に言えば、無料で分かるのはここまで。支払い能力の評価は有料の世界で、費用感は企業の信用調査の費用相場にまとめてあります。

③ 求人の出し方を観察する。 同じ職種の募集が何度も出ている、条件が短期間で変わる——こうした動きは、決算書が見えない小規模店では数少ない手がかりです。読み方は人手不足倒産が過去最多ペース/「人が辞めて潰れる会社」の見分け方で扱っています。

取引先として材料を納めている立場なら、今回の集計で「他社倒産の余波」が2件あった点は覚えておいて損がありません。1社の閉店は、卸・リース・内装の会社に順番に伝わります。

「倒産が増えた業種=避けるべき」ではない

念のため書きます。22件という数字は、全国の中華料理店の総数から見ればごく一部です。同じ7ヶ月に、新しく開業した店も相当数あります。

業種の統計は、目の前の1社の状態を何も語りません。 統計が教えてくれるのは「どこに負荷がかかりやすいか」であって、「この店が危ない」ではない。小さな飲食店に応募するときも、取引を始めるときも、結局はその1社を実名で確認するしかありません。しょくばログを作っているのは、その1社分の確認を無料で終わらせるためです。

よくある質問

中華料理店の倒産が増えたのはなぜですか?

東京商工リサーチの集計では、原因別で販売不振が20件(構成比90.9%)と大半を占めています。加えて物価高が要因の倒産が5件、人件費高騰が要因の倒産が4件と、いずれも前年同期から増えています。売上の落ち込みにコスト増が重なった構図と読めますが、個別の店ごとの事情までは公表データからは分かりません。

自分の勤め先が危ないかどうか、無料で調べられますか?

「支払い能力」は無料では分かりません。無料で確実に分かるのは、法人として実在しているか/登記が閉鎖されていないか/所在地や設立時期まで。国税庁の法人番号公表サイトと官報(インターネット版は直近90日分)が公的な無料情報です。

個人経営の店は調べようがないのでしょうか?

法人番号がないため、法人データベースでは確認できません。飲食店の場合は保健所の営業許可が必要なので、自治体によっては許可施設の一覧が公開されています。ただし営業許可の有無は経営状態を示すものではありません。

会社の業種はどこで確認できますか?

法人番号公表データには業種の記載がありません。業種の確認は自社サイト・許認可情報・求人内容などを組み合わせる必要があります。手順は会社の業種を調べる方法にまとめています。

倒産と休廃業・解散は何が違いますか?

倒産は支払い不能などで破産・民事再生といった法的手続きに入ることを指します。休廃業・解散は、債務を整理したうえで自主的に事業をやめることです。今回の集計では、中華料理店の2025年の休廃業・解散は99件で、倒産件数より多くなっています。「潰れる」より「静かにやめる」ほうが件数としては多い、というのは飲食業に限らない傾向です。

まとめ

2026年1-7月の中華料理店の倒産は22件、2012年以降で最多。従業員5人未満81.8%・負債1億円未満81.8%・破産95.4%という内訳が示しているのは、小規模店に負荷が偏っているという事実です。

一方で、法人データベース側から見ると、社名に「中華」「飯店」「餃子」「拉麺」を含む法人764件の登記閉鎖率は15.4%で、全法人の13.2%とそこまで大きくは離れていません。統計は傾向を教えてくれますが、目の前の1社については何も言ってくれない。

しょくばログは、全国の会社を1社1ページにまとめ、登記情報・所在地・求人などを無料で確認できます。気になる会社があるなら、統計を読む前に、まず会社名で検索してみてください。

※本記事は2026年8月23日時点で公表されている情報にもとづく整理です。倒産・休廃業の集計値は東京商工リサーチの公表値、法人件数・登記閉鎖の集計は国税庁の法人番号公表データにもとづく当サイトの集計です(社名の文字列による抽出のため業種の網羅性はありません)。特定の企業の経営状態を評価・断定するものではありません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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