✍ 古家あきら | 2026-08-20 更新
会社の売上高を無料で調べる方法 — 決算公告・EDINET・信用調査の使い分け

「この取引先、年商どのくらいなんだろう」「応募しようとしている会社の売上規模を知りたい」——会社を評価するとき、いちばん最初に見たくなる数字が売上高です。
先に結論から。上場企業の売上高はEDINETで無料・確実に分かります。一方、非上場の中小企業の売上高は、そもそも公開する義務がありません。 会社法が義務づけている決算公告は「貸借対照表」であって、売上高が載る「損益計算書」の公告義務があるのは大会社(資本金5億円以上、または負債200億円以上)だけ。つまり日本の会社の大多数は、売上高を無料で調べる手段が制度上存在しない、というのが正確な答えです。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「売上高で検索できないんですか」という要望を本当によくもらいます。今日はその「なぜ出せないのか」も含めて、無料で行けるところまでの手順と、行けないときの代替を書きます。
前提:売上高は「原則として公開義務がない」数字
ここを誤解したまま探すと、いつまでも見つからない情報を探し続けることになります。
株式会社には決算公告の義務があります(会社法第440条)。定時株主総会の終結後、遅滞なく貸借対照表を公告しなければならない、というものです。ただし——
- 一般の株式会社:公告が必要なのは貸借対照表だけ
- 大会社(資本金5億円以上 または 負債200億円以上):貸借対照表+損益計算書
売上高は損益計算書のいちばん上の行にあります。つまり大会社でなければ、売上高を公告する義務は最初から無い。ここが出発点です。
さらに現実的な話をすると、貸借対照表の公告義務すら守られていない会社は珍しくありません。違反には100万円以下の過料という定めがあります(会社法第976条)が、中小企業でこれが実際に問題になる場面はほとんど見かけません。
調べ方①:上場企業ならEDINET(無料・確実・3分)
相手が上場企業、または有価証券報告書の提出義務がある会社なら、ここで完全に解決します。そもそも相手が上場しているかどうかが分からないときは、先に会社が上場しているか確認する方法で判定してください。ここで分岐が決まります。
金融庁の EDINET(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/ )で会社名を検索し、有価証券報告書を開きます。売上高は「第一部 企業情報」の主要な経営指標等の推移にあり、直近5年分がまとめて載っています。連結・単体の両方、セグメント別の内訳まで無料で取れます。
もっと速報性が欲しければ、東京証券取引所の TDnet(適時開示情報閲覧サービス)で決算短信を見る手もあります。有報より数週間早く出ます。
上場企業に関しては、有料の信用調査を使う理由はまずありません。一次情報が無料で全部公開されているからです。
調べ方②:大会社なら決算公告を探す(無料・ただし90日の壁)
相手が非上場でも大会社に該当するなら、損益計算書が公告されているはずです。公告の方法は3つあり、どの方法を使うかは登記事項なので、登記簿を見れば分かります。
官報の場合
2025年4月1日に官報は電子化され、官報発行サイト(https://www.kanpo.go.jp/ )に掲載される電子データが正本になりました。このサイトでは直近90日分の官報を無料で閲覧・ダウンロードできます。
問題はこの90日です。決算公告は定時株主総会の後に出るので、3月決算の会社なら6〜7月に集中します。タイミングを外すと無料では読めない。過去分を検索したい場合は、官報の有料検索サービスや、官報販売所が提供する決算公告のデータベースを使うことになります。
電子公告(自社サイト)の場合
近年増えているのがこのパターンです。会社の公式サイトに「電子公告」「決算公告」というページを持ち、そこにPDFや表を掲載します。電子公告のURLは登記事項なので、登記簿さえ取れば確実にたどり着けます。サイト内で「決算公告」「IR」「会社情報」あたりを探すのが早い。
日刊新聞紙の場合
日本経済新聞などに掲載するパターン。過去分の閲覧は図書館や新聞データベースが必要で、実務的にはいちばん手間がかかります。
登記簿から公告方法を確認する手順は、会社名から法人番号を調べる方法で法人番号を特定してから登記情報提供サービス(有料)に進むのが定石です。
調べ方③:会社の公式サイトと採用ページ(中小ではこれが本命)
制度の話ばかりしましたが、中小企業の売上高が実際にいちばん見つかるのはここです。
- 会社概要ページ:「売上高」「年商」の欄に自主的に書いている会社は多い
- 採用ページ・求人票:応募者に規模感を伝えたいので、会社概要より詳しいことがある
- プレスリリース:「年商○億円を突破」のような発表
- 業界団体の名鑑・自治体の企業紹介:地場の製造業などで載っていることがある
うちは求人と会社情報を突き合わせて扱っているのですが、公式サイトの会社概要には書いていないのに求人票の「会社の特徴」欄に年商が書いてある、というケースにはよく出くわします。会社概要だけ見て「載っていない」と結論を出すのは早い。
ただし注意点があります。自主公開の数字は検証されていません。いつ時点の数字か、連結か単体か、グループ合算かが書かれていないことも多い。取引の与信判断に使うなら、必ず年度と範囲を確認してください。
調べ方④:有料の信用調査(推定値が混じることを理解して使う)
帝国データバンクや東京商工リサーチの調査報告書には、非上場企業の売上高も載っています。取引の与信判断で本当に数字が必要なら、最終的にはここです。
ただし知っておいてほしいのは、調査報告書の売上高は、必ずしも監査された確定値ではないということ。調査員による取材・企業からの申告・業界の推計が混じります。だから同じ会社でも調査会社によって数字が違うことがある。「有料だから正確」ではなく「有料だから取材のコストがかかっている」と理解するのが正しい。
与信全体の組み立て方は取引先の与信を調べる方法にまとめています。
しょくばログを運営して分かった、正直な話
うちは全国 4,988,967社 を扱っています。その中で、売上高のデータは持っていません。持てないのです。
理由はここまで書いたとおりで、売上高は公開データとして存在しないから。国税庁の法人番号公表サイトには商号・所在地・法人番号しか無い。gBizINFOは上場企業の財務情報こそEDINET由来で入るものの、中小企業の売上高は入らない。公開データを組み合わせて日本中の会社を並べる、という作り方をしている以上、売上高の列は最初から埋まらない。
「売上高 検索 無料」と検索して満足なページに当たらないのは、記事の質の問題ではなく、探している情報が制度上どこにも無いからです。これは調べる側が最初に知っておいたほうが時間を無駄にしません。
そのうえで、うちが実務で使っている代替の見方を書いておきます。
売上高が分からないときの代替指標
売上高が取れなくても、会社の規模と体力はある程度推測できます。
- 従業員数 × 業種の平均的な一人当たり売上:業種によって一人当たりの売上規模は大きく違います。卸売や商社は一人当たりが大きく、労働集約型のサービス業は小さい。同業他社と並べると相対的な位置が見えます。調べ方は会社の従業員数を調べる方法へ。
- 資本金:規模の目安にはなりますが、過去の数字であって現在の業績は示しません。会社の資本金を調べる方法で限界も含めて書いています。
- 業歴(設立年):長く続いていること自体が一定の売上の裏付けです。会社の設立年を調べる方法。
- 求人の出し方:継続的に採用しているか、職種の幅があるか。事業が回っていないと採用は続きません。
- 事業所の数と拠点:支店・営業所・工場の数は、公式サイトのアクセスページで分かります。
この5つを重ねると、「年商○億円」という一点の数字より、むしろ実態に近い像が見えることがあります。会社が今も動いているかどうかの確認は会社が実在するか確認する方法、規模全般の見方は会社の規模を調べる方法を参照してください。
よくある質問
非上場企業の売上高が無料で分かることはありますか?
あります。①大会社に該当し決算公告に損益計算書が載っている場合、②会社が公式サイトや求人票で自主的に公開している場合、③官公庁の入札実績や業界名鑑に記載がある場合。ただし大多数の中小企業は、この3つのどれにも当てはまりません。
「年商」と「売上高」は同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われますが、「売上高」は損益計算書上の正式な会計用語、「年商」は日常的な言い方です。会社が自主的に公開している「年商」は、グループ全体の合算だったり、税抜・税込があいまいだったりします。数字を比較するときは定義をそろえてください。
決算公告を出していない会社は危ないですか?
それだけでは判断できません。中小企業では決算公告の未実施はかなり一般的で、財務状態と直接の関係はありません。危険信号として見るべきは、公告の有無より代表者や本店所在地が短期間に変わる、求人の内容が急に変わるといった動きのほうです。
官報の過去の決算公告を無料で読む方法はありますか?
官報発行サイトで無料なのは直近90日分です。それより古い公告を無料で読む一般的な方法はありません。定時株主総会の時期(3月決算なら6〜7月)に合わせて確認するか、有料の官報検索サービスを使うことになります。
売上高から会社の安全性は判断できますか?
売上高は規模を示すだけで、安全性そのものは示しません。売上が伸びていても資金繰りで倒れる会社はあります。取引の判断では、売上高より支払い条件・支払い遅延の有無・業歴のほうが実務的に効きます。
まとめ
会社の売上高を調べる手順は、相手の種別で分岐します。
上場・有報提出会社ならEDINETで無料・確実。大会社なら決算公告(官報は直近90日無料、電子公告なら自社サイト)。それ以外の中小企業は、公式サイトや求人票の自主公開を探し、無ければ有料の信用調査。 これが全体像です。
そして最も大事な前提が、中小企業の売上高には公開義務が無いということ。無い情報を探し続けるより、従業員数・資本金・業歴・求人の出し方を重ねて規模を推測するほうが、実務的には早く正確に近づきます。
関連する記事:会社の規模を調べる方法、会社の資本金を調べる方法、会社の従業員数を調べる方法、取引先の与信を調べる方法、会社が実在するか確認する方法、会社の設立年を調べる方法。
※本記事は一般的な情報です。取引・与信の判断は複数のソースで裏取りしてください。